[Eng Sub] お茶の旅〜松江編〜前編・不昧公・菅田庵|日本茶道|A Trip to Matsue|Japanese Tea Ceremony

皆さん、こんにちは
アンの茶道生活へようこそ
今日は島根県の松江に来ています
こちらの美しいお城は「国宝5城」の一つ
松江城
別名千鳥城とも呼ばれています
江戸時代から現存する天守なんですよ
江戸後期、お殿様であった松平家
第七代藩主 松平治郷
大名茶人として名を馳せてきました
号を「不昧」とし、不昧公の名で親しまれています
本日の茶の湯の旅は
その不昧公を巡る旅に参りたいと思います
不昧公は17歳の若さで
松江藩の藩主となり
当時窮迫していた藩の財政を立て直し
近年その政治力が再評価されています
そして茶人として
確かな審美眼で日本各地に散在していた
茶道具の名品の収集を行い保管に努め
「雲州蔵帳(雲州名物帳)」と呼ばれる茶道具の目録帳を残しています
それらの品は今もなお国宝や文化財として
日本各地の美術館で展示保管されています
それでは、不昧公が作った茶室「菅田庵」に行ってみましょう
案内してくださるのは所有者の有澤一男さんです
松平家の家老有澤家の十三代当主に当たります
菅田庵は不昧公のお茶の心を体感できる茶室です
有澤家の山に自ら設計して造営されました
二百三十年の時を経て
今もなお同じ場所にその姿を留めています
ここは御成門と呼ばれ
この門から楓の馬場を通り、御成道を上っていきます
この道はお殿様専用の道です
史跡・名勝に指定されており、保存のため公開されておりません
今日は特別にこの道を歩かせていただき
不昧公が見たであろう景色を感じ取っていきたいと思います
道の両側は紅葉の木に覆われ
晩秋になると真っ赤に染まるそうです
新緑の今は青く茂り
目に爽やかで、時折涼しい風が通り抜けます
不昧公は鷹狩で遊んだ後などに
ここを訪れてはお茶を飲んで帰ったようです
高台に上がると
御風呂屋と呼ばれる待合に出ます
江戸末期に作られ、現存する待合としては希少で独特な建物です
不昧公は、ここで心と体を清めてからお茶を愉しみました
この頃のお風呂は蒸し風呂の様式となっています
手前の一条で着物を脱ぎ蒸し風呂の一番奥まで入って
お尻をつけて腰掛けます引き戸を閉めると
おしりの後ろあたりから高温の蒸気が吹き出してきます
足元には湯が張られており、足湯に浸かることもできます
この湯は室内の保温の役割を担っており
しばらく座っていると心地の良い汗をかいたことでしょう
そして板張りの洗い場でお付きの人に
水や湯をかけてもらい、体を清めます
体を拭いた後は、二畳の「袴直しの間」できれいな着物に着替え
更に続く二畳の待合で茶室からのお迎えを待つのです
普段は公開されていない
お風呂の焚き口もちらっと見に行ってみましょう
かまどで薪を焚き、その熱で石を焼きます
その石に水を掛けることで発生した蒸気を
お風呂の中に送り込む仕組みになっています
さて、御風呂屋の建物から石段を降りて
菅田庵の茶室に参りましょう
菅田庵は茅葺の入母屋造りとなっています
躙口を開けて中を覗くと
一畳の客畳と、お茶を点てる小さな台目畳
その間に柾目の中板を設けて
小さな空間に客との距離を適度に保っています
屋根を支える垂木には
桜や竹に交じって雑木も使われています
あたかもこの山で採った木材を寄せ集めたかのように
無造作に見えて実は調和がとれている
ここに不昧公のわび茶の精神を感じることができます
この菅田庵は独立した建物ではなく
台目畳の奥に水屋が控えます
その水屋は向月亭の水屋も兼ねており
さらに奥の部屋へとつながっています
躙口を出て向月亭に向かうには、この門を潜ります
すると視界がパッと開けます
当時は向こうに山が見え
手前の川を行き交う舟や城下の景色が見えたそうです
夕刻には山の上に月が見え
中秋の時期にはお月見をされたことでしょう
風の音と鳥の鳴き声
風光明媚なパノラマが広がっていたのです
そこは皆さんの想像の世界に委ねます
ここで私もお茶を一服ちょうだいします
不昧公は42歳の頃にこの菅田庵を作り
56歳で隠居され、茶と禅に遊ぶ老後を過ごし
68歳でこの世を去りました
その間、不昧公は冒頭でご紹介した「雲州蔵帳」のほか
自身が所蔵していない茶道具を含めた名物茶器の分類に着手し
図説とともに全18巻に及ぶ著書「古今名物類聚」にまとめました
それは現代においても茶器の評価基準となっています
さらに名品を集めるだけでなく
当時の職人に自身の美意識を反映した新たな茶道具も作らせました
今日は有澤さんのお陰で、不昧公の歩いた道
過ごした空間をご紹介できて嬉しいです
さて、お昼時になりました
食事をいただきに参りましょう
選んだのは松江の名店、庭園茶寮みな美さんです
ここから宍道湖を借景とした
枯山水庭園を眺めることができます
美しく剪定された松の木は樹齢約三百年だそうです
元々は盆栽だったものを植え替えたという説があるとか
あえて、下へ下へと下がるよう育てられ
相撲の雲龍型に似ていることから「雲龍松」と呼ばれています
この美しい庭園はアメリカの日本庭園
専門誌ランキングで、三位に選ばれています
「いっそ松江の人にでもなってしまおうか」
と、言葉を残した島崎藤村
ここから見る景色に魅了された気持ちが分かります
食事の方は、季節の会席をお願いしました
7月初旬の今にぴったりな涼やかな器に盛り付け、
いただくのが楽しみです
お鍋の中は、かわいい白玉が入ってました
冬瓜にトマトや椎茸、コクのあるスープに仕上がっています
焼き魚は脂がのってて、これまた美味!
さすが山陰の幸です
碗の物は蓋を開けるのが楽しみですよね
もちろん、いただくのも楽しみです
アナゴの南蛮漬けで口の中が一度サッパリとし
最後にウニの釜飯が出てきました
盛りだくさんのお料理をしっかり堪能させていただきました
こちらのみな美さん、実は鯛めしが名物なんです
不昧公の食の好みの言い伝えから初代板前長が
「不昧公好み皆美家伝鯛めし」と名付け
出汁や素材にこだわり、代々伝承されてきたそうです
次回は、その鯛めしをいただきに来たいと思います
皆さん、いかがでしたでしょうか?
不昧公の影響により、松江にはお茶の文化が根付いています
日常から薄茶を立てて飲み、和菓子をいただく習慣があります
そのため日本三大和菓子処として
老舗の和菓子屋さんが数多く存在します
不昧公自身は若い頃より石州流茶道を学びながら
色々な流派と交流し、自身の茶の湯を確立しました
明治維新を迎え、松平家は東京に移りますが
不昧公の茶の湯は、家老の有澤家に託されていきます
不昧公の「客の心になりて亭主せよ
亭主の心になりて客いたせ」の心得は
今日でも御流儀を継承する方々によって伝えられています
松江市では、不昧公の命日である
4月24日を「茶の湯の日」と定め
菅田庵では、有澤さんが代表を務める不昧会が献茶式を行っています
本日ご紹介した内容は
概要等に記載してありますのでご参考くださいませ
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