家なき子 1977 Nobody's Boy Remi 經典老片場「咪咪流浪記」23

經典老片場
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それは悲しくも壮絶な名誉の死であった。
ジョリクールは死んだ。
名も知らぬ町のたくさんのお客に囲まれて、
そして、カピとビタリスとレミの見守る前で生き絶えた。
大事にしていた将軍の帽子だよ。
大丈夫?
少しぐらいの風や雪ならちゃんと守ってくれるから。
冬になってからわずかの間に、
ビタリス一座はゼルビーノ、ドルチェ、そしてジョリクールと
相次いで仲間を失った。
それでもレミたちは重い足を引きずりながらパリへ向かう。
レミは思う。
ドルチェやゼルビーノやそしてジョリクールが生きていたときは、
パリは一座にとっての希望であった。
だが今、とぼとぼと雪道を行く残された者たちにとって、
パリとは一体何なんだろうか。
明日はいよいよパリへ入る。
それについてわしはお前に言っておきたいことがある。
お前も知っての通り、わしらの計画では、
冬の間でもお客の多いパリで春までを過ごすはずであった。
だが、わしらは仲間を失った。
ビタリス一座は全滅した。
と言ってもよい。
全滅?
そんな、まだカビだっているし、ぼくだって。
まあ待て、最後まで聞け。
旅芸一座とは何だよ。
道行くお客が足を止め満足し、
そしてお金を投げてくれてこそ始めて成り立つのじゃ。
特にわしらはジョリクールあっての一座じゃった。
ジョリクールはアフリカ生まれじゃったが、
パリへ着いたら、
わしは北の生まれの猿を飼って芸を仕込もうと思っている。
少しぐらいの寒さでも悲しい目に合わんやつよな。
ビタリスは悲しみの中にあっても、
すでに一座の将来を考えていたのだ。
パリへ着いたら、
とビタリスは話を続ける。
わしは新しい仲間を増やして芸を仕込もうと思う。
そのためにはか。
そこでじゃ、レミ。
パリに着いたらお前を一時、
知り合いの親方に預けてわしが働こうと思って。
わかってくれるな、レミ。
二ヶ月の間辛抱すればまた一緒に旅ができるのじゃ。
はい。
新しい一座のため、はいと答えたレミではあったが、
本当は大声で叫びたかった。
いやです。
もうこれ以上仲間がバラバラになるのは嫌です。
オシロさんと別れるのは嫌です。
一歩一歩パリへ近づく。
丘を一つ越えるごとにレミは自分に言い聞かせる。
二ヶ月の辛抱すればいいんだ。
オシロさんが刑務所に入った時だって僕は頑張った。
二ヶ月ぐらい。
どうした、レミ。
ちょっと息が切れて急に恥じたもんだから。
そうか。ではしばらく私の腕に捕まったまま歩くと良い。
ボアシサンレジエという村を通り抜け、丘を一つ越えた時だった。
レミはついにパリを見た。
それは黒っぽく地平線をも埋め尽くすくすんだ建物の巨大な群れであった。
そこにはかつてレミが希望と共に心に描いたパリはなかった。
花も青い空ももちろん輝く日の光もなかった。
冬のパリを支配しているのは暗く淀んだ空気であった。
ビタリスはパリに入るとまっすぐにレミを預かってくれるという親方の家へ向かっているらしかった。
押し黙ったままずんずん先を行くビタリスの態度がレミにそのことを教えていた。
汚れた雪どけ水が靴の底から染み上がって足の指を冷たく濡らす。
北風が吹き抜ける。
レミは思う。
もうしばらくすればビタリスと別れなければならないんだ。
だからせめて別れの時には温かい太陽の光が射してくれたらなと。
少々伺います。
ルールスイヌドーリアはどう言ったらいいんでしょうか。
豚のふたつきで辛抱できるな。
はい。
しばしの別れじゃカフェへ行ってケーキでも食おうか。
はい。
そうしよう。こういう時じゃたまにはちょっと贅沢をしてみよう。
さてどこのカフェにするかな。
安くて美味しいところ。
その通りじゃ。
なんていう馬車だ。
人の迷惑も考えずに飛ばしよって。
レミ、いつからだ。
靴の底に穴が開いてるじゃないか。
あの、離城を過ぎたあたりから。
なぜ黙っていた。
そんな靴では雪道は辛かったろうに。
水が染み込んで足が冷たかったろうに。
金がかかると思ってか。
靴の修理に金が。
それで嫌なんだろうか。
自分の辛いことは何でも我慢をしようというのか。
なんて優しい子だお前は。
レミ、ケーキはまたにしよう。
わしらはこれから二人で、いや、カピも入れて三人で仕事を探しに行かればならん。
お前を人に預けるのはやめだ。
わしらでできるだけやってみよう。このパリで。
お塩さん。
レミ、お前の辛さはわしにもよくわかっておったぞ。
わしとて何で愛する息子と離れることに平気でいられよう。
パリのどんよりした空から雪が舞い落ちる。
だがレミは少しだけ青空を見たような気がした。
はい、何?
このアパートに確かディノという男が住んでるはずですが。
ああ、覚えてるよ。でもね、去年サンダーザールの方へ越してしまったよ。
住所はわかるでしょうか。
あいよ、今書いてあげるよ。
ディノさんって?
昔からの友達でな。パリでは顔のきく男じゃ。
わしたちが住み込みで働けるところを世話してもらおうと思っても。
住み込みなら野動賃もかからないですね。
そういうことじゃ。ただし仕事はなんだかわからんぞ。
皿洗いかもしれんし、荷物運びかもしれん。
平気ですぼく。お師匠さんと一緒にいられるんならどんなことだってやります。
金なやつじゃ。さっきまでは泣きべそを買い取ったのに。
お、行ったぞ。カピもがんばれ。
これが有名なオペラ座じゃ。
オペラ座?
歌を志す者なら一度はオペラ座に出たいと思う。
世界の芸人の憧れの的じゃ。
お前も勉強次第でこの舞台に立てるかもしれんぞ。
いつの日か、ここの舞台に。
マルカーノ、マルカーノが出ておるぞ。
お師匠さん知ってる人?
いやいや、まあ昔ちょっとな。
さて、ディノをたずねるとしよう。
遅くなっては迷惑をかける。
はい。
え、あのディノが死んだ?
ああ、半年ほど前な。
心配するな、レミ。まだ心当たりはある。
さ、とりあえず宿をとるとしよう。
なにまだ二、三日なら宿金はある。
お師匠さん、おやすみなさい。
おやすみ。
どうもお疲れ様でした。
どうだった?今日のお敵は。
はい、最高でございました。
おめでとう、マルカーノ君。
フィナーレの拍手がここまで聞こえてきた。
大成功だったね。
その声は、もしや、もしやあなたは。
ああ、やっぱりだ、やっぱりそうだ。
お懐かしいございます。
おいおいよさんか。君は今や世界的な大歌手だ。
おい、君たち。私は後から帰る。先に帰ってくれたまえ。
はい。
先生も妙なのと知り合えたな。
ああ、あれは街角に立つ小敷芸人だぜ。
え、先生が子供たちにバイオリンを教えたい?
何も先生がそのようなことを。
いやいや、今の私にはそれが楽しいのじゃ。
心当たりはないじゃろうかな。
それはもう、先生がそうおっしゃるなら、いくらでも。
ありがたい。ぜひお願いしたいんじゃ。
しかし先生、ずいぶんお探しいたしました。
いったい今までどこで何を。
ここにおるのは昔の私ではない。今は旅芸人ビタリスじゃ。
ビタリス?
昔の弟子の君に訳も話さず世話をかけるが、どうか私の昔のことは隠し通してくれんじゃろうか。
いや、ぜひそうしてもらいたい。
わかりました。口が裂けても。
世界的オペラ歌手マルカーノ様のご推薦ですもの。とんでもありましたわ、私も。
どんな方でしょうね、その家庭教授をなさってくださる方は。
昔のお知り合いですって、立派な方に決まってますわ。
皆様、どうもわざわざお集まりいただきまして。
あら奥様、とんでもない。娘も楽しみにうちで待っておりますのよ。
ありがとうございます。
でもすごいな、あの世界的歌手がお嬢さんと知り合いだなんて。
誰でもな、歳をとれば知り合いはたくさんいるもんじゃよ。
お前だって、これからたくさんの知り合いや友達ができ、大切にしなければいかんぞ。
はーい!
カピ、いいかい?お前はそこで待ってるんだよ。
先生、よくいらしてくださいました。
思ってしまいますんだよ。
ではな、レム。
お待たせいたしました。この方が、ビタリスさんです。
初めてお目にかかります。私はビタリスと申す者。
ともあれ、まずは、ヴァイオリンを聴いていただきましょう。
ちょっと待って、何よあなた。その身なりは、旅芸人?
さようでございます。
冗談じゃございませんわ。旅芸人の家庭教師。
どうしましょう。うちの子が世間の物笑になりますわ。
いや、お待ちください皆さん。今は旅芸人をなさってますが、この方は。
マルカーノ君、ありがとう。君の親切は心から嬉しかった。
奥様方、失礼いたした。どうも場違いのようでした。
お待ちください。
皆さん、一度聴いてください。この方のヴァイオリンを。
音楽は服装や見栄ではありません。
私たちにお説教よ。
社交界でも噂になりそうだわ。
世界的オペラ歌手、実は旅芸人と大のお友達。
私は噂など気にはしない。
奥様方、誤解をなさってはいけませんぞ。
私はただ仕事が欲しいばっかりに、遠い遠いつてを頼りにマルカーノさんにおすがりした。
ただそれだけのことですごじゃ。
まあそう、遠いつって、そういうことならなんとなく口ずつ間が合うわね。
ほんと?
どんなお仕事でもいいんでしたら相談に乗ってもよろしいのよ。
私たち偉い方に知り合いは多いございますからね。
旅芸人ってどんなことをなさるの?
はい。歌を踊り、それに犬や猿を仕込みましての曲芸など、いわゆる大道芸でございます。
まさかお知り合いの偉い方に大道芸を必要となさるお方はおりますまい。
ではこれにて失礼を。
お待ちなさいな。
犬も仕込んだことがあるっておっしゃったわね。
このワンちゃんね、実はとっても礼儀知らずなのよ。
うまく仕込んだら私が雇ってもよろしくってよ。
誠でございますか。
先生!
面白かったけど、お雇いするのはやめときますわ。
先生!
申し訳ありません。
何の何のこれ、今の私には慣れたことよ。
吹雪になった。
パリの冬は冷たく、人間の最後の埃までもぎ取ろうとするかのように。
